特例措置対象事業場の適用条件
法定労働時間を特例的に延長できる制度のためか、特例措置対象事業場の制度を適用できる事業場は、規模や業種により制限されています。どのような条件があるのかについて見ていきましょう。
①常時使用する労働者が10人未満の事業場
この字面だけを読めば、「うちの会社は従業員がたくさんいるからこの条件には当てはまらない」と思う人もいるでしょう。しかし、10人未満の制限がかかるのは、あくまでも事業場単位であり、会社の単位ではありません。そのため、会社全体で従業員が100人いたとしても、一つの事業所や支店の従業員数が10人未満であればこの条件を満たすこととなります。
「常時使用する」の意味については、労働基準法では明確に定義されていません。そのため、正社員はもちろん、週3日・月1日のシフトで勤務しているアルバイト・パートでも、定期的に勤務をしていれば、「常時使用する」従業員に含まれると一般的には考えられています。
②適用業種
特例措置対象事業場となりうるのは、以下の業種に限られます。
- 商業(卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、駐車場業、不動産管理業、出版業(印刷部門を除く)、その他の商業)。
- 映画・演劇業(映画の映写(映画の製作の事業を除く)、演劇、その他興業の事業)。
- 保健衛生業(病院、診療所、保育園、老人ホームなどの社会福祉施設、浴場業(個室付き浴場業を除く)、その他の保健衛生業)。
- 接客娯楽業(旅館業、飲食店、ゴルフ場、娯楽場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業)。
1つの会社で複数の事業を営んでいる場合
例えば、不動産会社であれば、不動産管理業も不動産仲介業も営んでいることが多いと思われます。その場合は、過去1年間を振り返ったときに、その会社が不動産管理業・不動産仲介業のどちらが主たる業務だったのかを、実態に即して判断します。具体的には、売上の比率、従事する従業員の数によって個別具体的に判断することになっています。
(H21.5.29基発05290015)
特例措置対象事業場での所定労働時間の設定方法
特例措置対象事業場の条件を満たす事業場では、法定労働時間が1週間あたり4時間長くなります。所定労働時間の設定の仕方としては、単純に1週間あたりの労働時間を44時間以内に収める方法と、変形労働時間制を用いて、その月の1週間あたりの労働時間の平均が44時間以内になるようにする方法があります。
「1週間あたり44時間以内」のみを採用する場合
特例措置対象事業場の法定労働時間「1週間あたり44時間以内」のみを採用する場合、所定労働時間の具体例としては、以下の2つのパターンがあげられます。もちろん、この2つ以外にも、労働時間が44時間を超えない範囲でさまざまなパターンを設定することが可能です。
例1:土曜日を4時間にする
まず、週6日勤務として、月曜日から金曜日までの所定労働時間を8時間、土曜日を4時間にする方法があります。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
---|---|---|---|---|---|---|
8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 4時間 | 休み |
②1日当たりの所定労働時間を7時間20分にする
次に、①と同様に週6日勤務として、1日の所定労働時間を月曜日から土曜日まで毎日7時間20分とする方法もあります。こちらの場合も、労働時間を1週間あたり44時間に収めることが可能です。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
---|---|---|---|---|---|---|
7時間20分 | 7時間20分 | 7時間20分 | 7時間20分 | 7時間20分 | 7時間20分 | 休み |
変形労働時間制を併用する場合
また、労働時間を1週間あたり44時間にするほかに、変形労働時間制を併用することもできます。しかし、この場合は「1か月単位の変形労働時間制」と「フレックスタイム制」しか適用できないため、特例措置対象事業場で変形労働時間制を取り入れる際には注意が必要です。
1か月単位の変形労働時間制
1か月単位の変形労働時間制を導入する場合、1か月の中で繁忙期と閑散期がある場合には、平均して1週間当たりの労働時間を44時間以内にすれば問題ないとされています。
1週目 | 50時間 |
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2週目 | 35時間 |
3週目 | 41時間 |
4週目 | 50時間 |
とすれば、1週間あたりの労働時間の平均が44時間となり、柔軟にシフトを組むことができます。