遺族基礎年金の支給対象は、これまで母子家庭に限られていました。平成26年4月から新たに父子家庭(子のある夫)も対象になりました。遺族年金の男女差の解消の一つですが、遺族厚生年金では夫が受給するには「妻の死亡時に55歳以上」という年齢制限が残っています。遺族年金の改正をまとめました。
遺族基礎年金はこれまで子(原則18歳到達年度末まで、障害のある場合は20歳到達日まで)のある妻か、両親のいない子に限られていました。男性が家計を支えているのを前提に制度がつくられていたためです。
共働き夫婦では、妻が亡くなっても夫には遺族基礎年金が出ませんでした。しかし、父子家庭も増えるなか、遺族年金の支給に男女格差があるのは問題として今回、改められました。
●4月以降の死亡
2014度からは、子のある夫についても遺族基礎年金が支給されます。ただし、妻が4月以降に死亡した場合が対象で、妻の死亡が3月以前だと支給されません。2014年度の対象は2000人とみられています。
14年度の遺族基礎年金額は、子のある配偶者が受けるときは772,800+子の加算額です。子が一人の場合の加算額は220,400円です。
見直し当初、厚生労働省は第3号被保険者(厚生年金加入者に扶養されている配偶者)が死亡した場合は、遺族年金を支給しないとしていました。しかし、社会保険労務士らの指摘を受け、撤回しました。
第3号被保険者の死亡を支給対象外にすると、例えば会社員だった夫が病気で退職し、妻が代わりに働き始め、夫が妻の扶養となってすぐに死亡した場合、妻は遺族年金を受給できない事態になります。また、専業主婦も家事労働で家庭を支えているのに、その点が評価されていないとの批判もありました。
そのため、第3号被保険者の死亡は対象外との方針は撤回されました。生計を維持されていた目安である年収850万円未満であれば支給対象になります。
●男性だけに年齢制限
遺族基礎年金での男女格差は改善されましたが、遺族厚生年金を男性が受け取るのには年齢制限が残っています。
年収850円未満の条件を満たしていても、妻が亡くなった時に55歳以上であることが条件で、受給は60歳からです。ただし、遺族基礎年金を受けられる場合は55歳以上で受給できます。
妻の場合、遺族厚生年金の受給額や受給期間に違いはあるものの、年齢制限はありません。
一三年には、地方公務員災害補償法の遺族補償年金を受給するのに、男性のみの年齢要件は違憲との司法判断が示されました(大阪地裁)。労災の遺族年金に当たるものですが、遺族厚生年金についても見直しを求める声は強くなっています。
●3親等の遺族まで
年金受給者が死亡した場合、未支給年金が生じます。年金は偶数月に前月までの2ヶ月分が支給されます。たとえば、6月の支給日以前に死亡した場合は、4月、5月と当月の6月の3ヶ月分が未支給年金となります。6月の支給日以降に死亡した場合は6月分のみが未支給年金になり、7月に死亡した場合は六月、7月の2ヶ月分です。
未支給年金は遺族年金ではありません。遺族年金とは別に手続きが必要です。これまでは、生計を共にしていた「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」が受け取れました。
4月からは、これに加え、おい、めい、おじ、おば、子の配偶者など「3親等内の親族」までが対象になりました。